第2回日本建築設計学会賞(2018)

大賞
【大賞】Good Job! Center KASHIBA/STUDIO
作品名:Good Job! Center KASHIBA/STUDIO
設計者:大西麻貴+百田有希+榮家志保(大西麻貴+百田有希 / o+h)
  
奈良県香芝市にある、障害のある人とともにこれからの仕事について考える新しい福祉施設の提案。様々なメンバーの心身の状態に応じるために、斜めに交錯する板壁が、空間を分節しながらも抜けによって場をつなぎ、多様な居場所をつくっている。複雑な空間構成が従来の木造工法を応用しながら実現されているとともに、設計者だけでなく事業主や地域の人々と異分野のデザイナーと共同することで、プログラムから空間のあり方までが、これまでにない施設として提案されている。

 

【大賞】フクマスベース/福増幼稚園新館
作品名:フクマスベース/福増幼稚園新館
設計者:吉村靖孝(吉村靖孝建築設計事務所)
  
千葉県市原市にある福増幼稚園の新館。園児だけでなく、近所の親子にも開かれた民間資本による子育て支援施設である。建築は既成品のテント倉庫を外皮とし、その内部空間はラフな表現の木造のインテリアによって分節されている。設計過程の痕跡をあえてつつみ隠さずに定着させることで、あらかじめ決められていない施設の使い方や建物そのものの改変が利用者自らによって提案され、時間を経て完成されるようなあり方を目指している。
東京クラシッククラブ 森のクラブハウス・馬主クラブ棟
作品名:東京クラシッククラブ 森のクラブハウス・馬主クラブ棟
設計者:古谷俊一(古谷デザイン建築設計事務所)
  
新しいゴルフクラブに付随する2つの施設。敷地には20年前に植樹された木々が、グリッド上に立ち並ぶ。RC造のクラブハウスは、樹径に近似する細い柱とミニマルな構造表現によって森と一体化し、食事や室内アクティビティを楽しめる居心地のよい場を提供する。馬主クラブハウス棟はL字に開かれた配置で、丸みを帯びたデザインの馬房や、屋根に施された草屋根によって引退馬たちにとっても心地の良い場所をつくるとともに、乗馬を楽しむゲストを迎え入れる。
Topological Folding House
作品名:Topological Folding House
設計者:山口隆(山口隆建築研究所)
  
旗竿敷地に建つ住宅である。周囲に開いたギャラリーや、パーティーを行える場所として使いたいという居住者の意向に応答し、一枚の板を折り曲げるように床、壁、屋根がつくられ、1階から2階、バルコニー、外部の屋根までが流動的につながるトポロジカルな構成をもつ。構造は木造で、ローコストながら豊かな空間をつくることが目指されており、洗練されたディテールと施工によって白く抽象的な表現に仕上げられている。緻密に計算された開口部の配置は、環境条件に応答するだけでなく、空間全体に動きをもたらしている。
houseA/shopB
作品名:houseA/shopB
設計者:木村吉成+松本尚子(木村松本建築設計事務所)
  
京都で金属加工業を営む夫婦のファクトリーとショップ、カフェ、住まいが一体となった建築である。職住一体型住居のタイポロジーを更新する試みとして、道路面にファクトリーが配置され、下階から上階に向けてプライベートな空間が段階的にゾーニングされている。京都の都市の構造に対する「構え」として、シンメトリーの建築を半分に切断したような構造体をもち、その切断面は片持ち梁によって大きな開口部を形成するとともに、奥行きと広がりが両立した空間を実現している。
舞多聞の家
作品名:舞多聞の家
設計者:畑友洋(畑友洋建築設計事務所)
  
神戸の新興街区周縁の傾斜地に建つ住居の計画。造成や木々の伐採を行うことなく、生茂る木立のわずか4mの隙間に、木造の「面外立体トラス」という新しい構造による間口3.6mの空間が挿入された。内外が一体となる透明な空間によって、木立とともにある住空間のイメージが実現されている。金物に頼らない宮大工の技術に支えられた伝統の構法を継承しながらも、現代建築として傾斜地での建ち方に新しい可能性を示している。